御法川です。
打合せが続いているので、
こうして明け方に昨日を振り返ると
本当によく喋っている自分に気づきます。
まだ形を整えていないことに言葉で輪郭を与え、
それが人に伝わるかどうか、いろいろと試みる。
相手の受け応えによって自分の想いが輝きを増すこともあれば、
うまく伝わらないもどかしさから、話に彩りを添えたり、
言葉を変えてみたり。
言いなおし、語りなおす。
思わぬ話の脱線が驚きを生んでくれることもあれば、
何気なく口に出てしまったことを後から後悔したりすることも。
ともあれ、
話す中で見出された材料は、新しい道を開いてくれる。
具体的な行動に出る前のウォームアップになります。
そうして、話すことから書くことへ。
自分の中を通り過ぎたことを書き留めるのは、
人生を二度生きる手段のような気がしています。
五感によって蓄えられた感覚を見直し、繰り返す。
ハッと霊感のこもった息をのんだ時、ぼくはメモを残します。
人前だと照れくさいので、
ひとりになった時に手近な紙に書き留めておく。
大抵はキーワードを並べただけの走り書き。
それを後から反芻して整理する。
映画のネタにしようとは考えていませんが、
「まるで映画みたい」 と形容したいような出来事って
けっこう多いものです。
この一週間くらいのメモのいくつかを、
以下に整理してみます。
自分のためのノートでしかありませんが、
その時のぼくの気分を面白がってくれたら嬉しいです。
◎
待合わせで入った喫茶店にて。
喫茶店というより、昔ながらの 「茶房」 といった雰囲気の店内。
初老のマスター、ひとり。
店内BGMはジャズ。
レコードが詰まった棚を探りながらフレーズを口ずさむマスター。
ジャケットを一枚ぬき出して、盤面に針を落とす。
マスターの口ずさんでいたフレーズと、
レコードの滑り出しが同じなことに気づいて、
ぼくの耳はダンボの耳に。
マスターの中では先に音楽が鳴っている。
口ずさみながらジャケットを探るマスターの風情が粋で、
クサイほどに映画的なのでした。
◎
別れ際、一生懸命に手を振る人。
街の中で、あんまり大きく手を振られると、
なんだか恥ずかしい。
・・・けど、子供のころ。
友達どうし誰もがあんな風にバイバイしあったものだ、
と思い返す。
◎
笑い方。
笑った時のほっぺのシワ。
人の表情が動く、その一瞬に惹かれて、
その人を受け入れてしまう不思議。
そういう、言葉が不要な領域では、
怒った顔を好きだという人がいてもおかしくない。
でも、やっぱり笑顔だろうな。
隠すことができない、その人の “さま” を目の当たりにして、
人は人を信じたり、愛したり、嫌ったりするんだろう。
◎
横断歩道にて。
風が強く、ライターの火が泳いでしまうので、
ぼくの背中を風よけにして煙草に火をつける人がいた。
けしからん。
でも、今度ぼくもやってみよう。
人の背中も役立つのです。
◎
友人達の会話。
メソメソしたA君の愚痴話に場の空気が重くなり、
堪りかねたB君が突如!声を荒げる。
B君 「おまえトグロ巻いてんじゃねえよ!」
一瞬の沈黙があって・・・
A君 「それを言うならクダでしょ、クダ」
B君 「クダ巻いてんじゃねえよ!」 と、更に爆発。
みんな大爆笑。
◎
先週は東京 〜 ソウル 〜 東京 〜 ロスアンゼルスを
駆け足で巡っていまして、
まだ時差に悩まされています。 歳でしょうか?
以前はそんなにつらくなかったはずなのに。
西に向かって飛ぶのはそんなにつらくないのですが、
東に向かうと時差がきついですね。
人間は地球の自転より速いスピードで進んではいけない、
ということなのかもしれません。
(受信メールより抜粋)
◎
ぼくの仕事場の前に立っている自販機。
缶コーヒーの半分がホットになっていた。
いつのまにやら知らぬまに。
都市の季節感。
◎
感性に技術をつける。
・・・と、まあ、こんな感じ。
これらのささいな記憶が、皮膚の内側に沁み込んで、
自分の中でまだ未使用な感覚を目覚めさせてくれることも
あるのです。
書くことは、忘れないために。
この日々を、思い出にしてしまわないために。
実人生に活かすために。
書く。
posted by seka-toki at 07:23
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御法川修より